ソーダー味と土砂降り

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ソーダー味と土砂降り

 お風呂上がりに、無性にアイスが食べたくなって、自宅のマンションから歩いて10分のコンビニに、ふらっと買いに出た。  アラサーの独身女が、休日の夜にひとりでコンビニアイスだなんて、どうなんだろ。  久しぶりのソーダ味のアイス。  口いっぱいに懐かしい味が広がる。  そうだ。母の葬式の後にも食べたよね。  あの日の記憶っていったら、このアイスの甘さと冷たさくらいしか残っていないけど。  こんなに甘ったるかったかな⋯⋯。  あの日はあんまり味が感じられなかった。  閉店後のシャッターが並ぶ商店街を、アイスを舐めながら歩いていると、頬に冷たいものを感じた。反射的に頭上に目を向けると、吸い込まれるような真っ暗な空から、わたしに目がけて大きな雨粒が次々と落ちてくる。 「もう。今日は降らないって言ってたのに」  返事が返ってくるはずもないけど、空に向けて愚痴を吐き出す。でも、それが届いたのか、みるみるうちに雨足が強くなった。  雨は大嫌い。  どう工夫したって、靴下が濡れるから。  ぐちゃぐちゃの靴の中なんて最低。  それにたいてい、頭が痛くなる。  本気で頭痛は世の中の悪だと思っている。  でも、傘はもっと嫌い。  差しても肩が濡れちゃうことだってあるのに、差してない時の存在感が大きい所。  何かをあてにして頼っても、裏切られた時の方が数倍辛いってことくらい知っている。  だから、雨は大嫌い。  ⋯⋯そんな自分も、大嫌い。  わたしに意地悪をしているのか、バケツをひっくり返したかのように降る雨のせいで、また靴下が濡れた。  もう、最低最悪だ。  
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