88人が本棚に入れています
本棚に追加
小さなプロローグ
わたしは、雨が『大嫌い』だった。
でもあなたは――雨がよく似合っていた。
アスファルトから立ちのぼる匂いを感じるたび、ふと思い出す。
雨空を優しく見上げる、あなたの横顔を。
二人が出会った日を境に、ほんのちょっぴりだけど、わたしにとっての雨の存在が『大嫌い』から『嫌い』に格上げされた。
朝の天気予報で「今日は梅雨の中休みでしょう」と言っていた、6月初めの土曜の夜。
突然の土砂降り雨の冷たさと、あなたと雨宿りしたことを、わたしは決して忘れない。
最初のコメントを投稿しよう!