五日目の夜は夢箱の中で

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「集められた犬が最後に入れられる部屋さ。さっきの連中は、みんなドリームボックスの中に送られたんだよ」 「ドリームボックスって……そこに入ると、どうなるの?」 「さぁ。一つだけ言えるのは、ドリームボックスに入れられて帰って来た犬は一匹もいないって事だ」  ゴクリと生唾を飲む私達に、雑種犬は続けた。 「心配せずとも、今すぐドリームボックスに入れられるわけじゃないさ。さっきのは五日目の檻……ここへ来てから五日経った犬達だ。五日経った檻から順に、ドリームボックスに送られる。それまでに運よくここから出られればいいだけの話だ。もっとも……可能性がありそうなのはそこのダックスの姉さんぐらいかもしれないがな」 「私が……?」 「なんだよそれ! 俺達はこのまま殺されるのを待てっていうのか?」  食って掛かるコタローに、雑種犬は平然と言い返した。 「お前はそうだろうな。ここから出るっていうのは、簡単に言えば誰か引き取りたいっていう飼い主が見つかるって事だ。お前みたいな野良犬を引き取る人間なんているはずがないだろう」 「なんだって? 自分だって人の事言えない癖に。そもそもお前、偉そうに言うけどなんでそんな事知ってんだよ! どうせでたらめ言ってるだけなんだろ」 「そう思うなら思えばいい。信じるも信じないもお前の勝手だ」 「なんだよその言い草! でたらめじゃないって言うのなら、その証拠を見せて見ろよ」 「俺はここに入るのが初めてじゃない。そう言えばいいか?」  コタローは口を噤んだ。 「前に一度、来た事があるんだよ。その時は運良く前の飼い主に引き取って貰えた。まだ俺がそこのトイプードルみたいに小さな子どもの頃の話だ」  雑種犬はココを向き、目を細めた。 「おそらくお前の妹とかいうのは、もっと待遇の良い場所で丁重に扱って貰ってるんだろう。トイプードルで、しかも仔犬となれば貰い手も見つかりやすいだろうからな。俺みたいな雑種でも、仔犬ってだけで喜んで引き取ってくれる飼い主が見つかったんだ。少なくともお前の妹は助かるだろう」
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