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翌朝、女の人がやってきて写真を撮られた。
私達は雑種犬の言いつけを守り、それぞれが好印象を持ってもらおうと努めた。ただ、コタローははしゃぎ過ぎてちょっと煙たがられていたから逆効果だったかもしれない。
それ以外にやってきたのは、餌や水を交換しに来た制服姿の人間だけで、私達を外へ連れ出してくれるような動きは全くなかった。
迎えた夜――再びグゥゥゥンと振動が鳴り響き、昨晩に引き続き知らない犬達がドリームボックスの中に送られて行った。雑種犬の話を聞いた後だと、彼らの悲鳴はより一層私達を恐怖に陥れた。
そうして何の進展もないまま二日目が過ぎ、三日目がやってきた。
前日に続き、やって来るのは男女とも同じ制服を来た人間ばかり。彼らはおそらく、この施設で働く人なのだろう。
「本当に貰い手なんて現れるのかよ」
人が来る度にさんざんアピールを繰り返したコタローは、外に出して貰えるどころか逆に注意されて、すっかり腐りきっていた。
夜になると、再びドリームボックスの悪夢が襲い掛かる。
貰い手となるような人間が現れる気配もなく、忍び寄る死の気配に怯えている間に悪戯に時間だけが過ぎ――雑種犬の話は本当なんだろうかと疑問に思い始めた四日目の朝、変化は突如訪れた。
餌でもなく、水の交換でもなく、妙なタイミングで制服を着た人間がやってきたのだ。
「えっ! ちょっと待って、どこに行くの? まさかドリームボックスじゃないよね?」
人間は戸惑うココを抱き上げ、連れ去ってしまった。
風のように、あっという間の出来事だった。
「ねえ、もしかして……」
私が意見を求めると、雑種犬は気だるそうに目を開けた。
「前に撮った写真でも見て、ココを気に入った人間が現れたのかもしれないな。まぁ、まだわからん。とりあえず会ってみたいというだけで、すぐ戻されるかもしれん」
あの妹思いの健気なトイプードルが助かったのだと思うと、自分の事のように嬉しかった。どうかそのまま、良い飼い主に引き取って貰えますように。私は胸の中で必死にお祈りした。
結果として、ココは二度と私達の檻に戻って来なかった。
その代わり、私達の檻には別の犬が連れて来られた。
ココによく似たアーモンド色のトイプードルの女の子で――ココの妹のモモだった。
「どうして? どうして私がここに? 信じられない!」
モモは私達には目もくれず、わんわん声をあげて泣き続けた。
「ねえ、何があったの? ココには会えたの?」
「会えたも何も……信じられない! 私より、あんな脚の悪い犬を選ぶなんて!」
モモの口から飛び出した恨み言に、私達は絶句した。
ココとモモは二匹揃って知らない人間の前に並べられた後、ココだけがその人に引き取られた。残ったモモは元いたケージに戻される事もなく、私達の檻の中に連れて来られたのだという。
どうして五体満足なモモではなく、脚を引きずったココが選ばれたのかは私達の知る所ではない。ただ……
「あんな犬、一生恨んでやる! せっかく新しい飼い主に拾われて幸せになるチャンスだったのに! 自分ばっかり幸せになりやがって!」
その人間はきっと正しい判断をしたのだと、私達は密かに目配せし合った。
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