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カーテンから明かりがこぼれている。私はベッドから体を起こす。時間を確認する。アラームで起きているのだから、確認する必要はないのだけれど、私はいつも確認してしまう。朝食は八枚切りのトースト二枚。昔は六枚切り一枚だった。そのうち、ダイエットに、と八枚切り一枚にしたことがあったが、空腹感がひどく、諦めてしまった。六枚切りに戻せばよかっただけなのだけれど、買い足したときに間違えて八枚切りを買ってしまって、次からは気を付けようと思っているうちにいつの間にか今のかたちに収まった。代わりにマーガリンを買うことをやめた。でも、それも、もしかしたらそのうちに変わってしまうかもしれない。
朝の支度を終えて家を出るタイミングになって携帯電話が充電されたまま、部屋に置き去りになっていることに気づいた。一度履いた靴を脱いでとりに戻る。携帯電話を充電から外した。画面は一度灯り、なんの通知もないことを教えてくれた。
私の家から駅までは徒歩圏内で、それでもバスは通っているのだけれど、歩いて向かう。電車通勤というのは子どものころ大人っぽくて憧れていた。私の住んでいた地方にも、もちろん電車は通っていたのだけれど、私の実家は駅まで少なくとも歩いていくような距離にはなくて、また、幸いにして私は高校も自転車で三十分程度の範囲で合格できていた。だから、私にとって電車に乗ることは特別で、非日常的だった。この事を話すと「地方民だったのに、でかけなかったの?」と聞かれることが幾度かあったのだけれど、私や、私の周囲にその欲がなかったのか、電車に乗って出かけるような遊び方に覚えがなかった。
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