ベテルギウスの夜

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 遠ざかっていくデイヴィッドの足音を聞きながら、ウォルターはコートの胸ポケットから煙草を取り出し、マッチで火をつけた。深く、深く煙を吸って、大きく吐いた。  煙草を咥えたまま、今度は左右のポケットをまさぐり、持ってきたものがちゃんとあるか確かめた。  左のポケットには会社と家族宛ての手紙。右にはS&W/M36。  ウォルターはその黒く小さなリボルバーを右手に乗せるようにしてそっと持つと、少しの間、手に伝わるその金属の冷淡さを確かめるように、それを見つめた。  それから、撃鉄をかちりと倒した。
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