五章 ー愛ー

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 飛んだ先は狭い路地道だった。今夜の狩りを身を潜めて伺っていたのか、物陰にしゃがんでいた花内は、羅井の姿を見て驚いた表情を向けた。 「花内耕介さん、お待たせしました」 「羅井さん……。お世話になってます」  にこりと営業用の笑顔を浮かべる。ここは商店街エリアだと言うことは一目瞭然で、ちょうどええと思った。  軽く様子を見たところ、今日神藤は学校エリアにいる。花内がエリア移動等のアイテムを使えば話は違ってくるが、エリアが同じでなければ出会う確率はかなり低い。  替え玉である神藤の死を見せ付けさえすれば、瀬音小夜に心酔する花内は、騙されたまま自死するだろうと考えていたからだ。  立ち上がった花内はぺこりと頭を下げる。そして羅井の手が掴むものに気付き、目を大きく見開かせた。 「それ……」 「依頼のもんやで。瀬音小夜を殺した犯人、神藤静輝や」  にっと笑って、何処の誰とも知らぬ頭を差し出す。  まだ状況を理解出来ないのか、いや理解したくないのか、花内は呆然とそれを見ていた。  軽く説明と話を交わして、すっかり生きる気が削がれた花内に手を振り、その場を離れた。  これで面倒な依頼は終わった。神藤が殺されるだろう場面は回避出来た。  もし神藤を駒として採用何かしてなければ、こうして助けることはない。そう思えば神藤は自分の知らないところで守られており、得なやっちゃなぁと思わず苦笑した。  しかしこれも野望の為。あともう少しで報われるはずだから。  王様捜しに専念出来ると安堵する羅井だが、まさか華琳が王慈嵐に真実をリークするとは考えもしなかっただろう。  それが引き金となり、哀しい夜がやって来ることも――。
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