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王慈嵐が花内耕介に真実を伝える。神藤静輝は生きていて、情報屋に騙されたと言うことを。
それを知った花内は神藤の元に飛ぶ。復讐を果たす為に。
――そんなことが起きているとまだ知らない羅井は、少しだけ鮫島の所に訪れてから、いつもの教室に向かった。
ガラリと扉を開けるとすぐ、視界に華琳が映った。自分が愛用する椅子に座って、羅井の姿を見て手をひらひらと振る。
「こんばんは。海凪君がいなかったから、今日は会えないのかと思っちゃった」
「ちょっと用事だけ済まして来たんです」
薄く笑って中に入る。華琳は立ち上がりどうぞと手を差し向けるので、代わりに椅子に座る。と、膝の上に座り直して、ふふと華琳が笑った。
端から見ればイチャつくカップルであるが、これがいつもの光景である。あくまでもビジネスパートナーとしての関係性で、それ以下でもそれ以上でもない。
「この前は助かりました。取り引きのやつ、何するか決めてくれました?」
そう言えばと、訊ねる。
「えぇ。ちゃんと考えてきたから、会いに来たの」
「何ですか?」
「海凪君が今、邪魔だと思っている人を教えて」
羅井の耳元に口を寄せて、色香漂う声で囁く。
まさかそんなことを訊かれると思ってもおらず、そんなお礼だと考えていなかった羅井は、ぱちくりと目を見開いた。
「……え? そんなんでいいんですか? もっとあるやないですか。前みたいにアイテムとか」
「そんなのって、私にとっては重要なことよ」
「ホンマに、いいんですか?」
親しき仲にも礼儀あり。例え気心知れた関係であってもお得意であっても、きちんと報酬は行うべきだと羅井は思っている。お互いの依頼に見合った、対価を払い合うものだと。
もちろん相手が求めるものを支払うのが一番であるが。
「私は海凪君の力になりたいし、あなたの全てを知りたいの」
「まぁ華琳さんがそれを望むのなら、俺は拒否しません」
念を押しても彼女の答えは変わらないので、羅井は苦笑して分かりましたと言った。
「邪魔と言うか、このままやとぶつかって面倒になるやろうなぁって言うのは3人います。ひとり目は火燈蓮。ふたり目は、頼実杏慈」
指で3の数字を作り、華琳の目をじっと見据える。
「3人目は王慈嵐」
仮にもナイトメア内では恋人と通っている男。彼氏の名前を告げた時どんな反応を見せるか、観察眼を向ける。
しかし微かに表情が崩れることもなく、動揺と言った心の変化すら見られない。
完璧に演技してみせているのか、本当はどうでもいいと思っているのか。これだけではまだ判断し兼ねるなぁと思った。
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