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「全員、有名人ね」
「ははっ。彼らも伊達に有名人じゃないってことですね」
お互いに笑い合う。
華琳は微笑みを称えながら手を伸ばし、そっと羅井の頬に触れた。
「あなたのことを知れて、とても嬉しいわ」
「でも何や俺だけ楽過ぎて、めちゃ申し訳ないんですけど。何なら今日の一殺分くらい、すぐ用意しますよ?」
「本当にこれでいいのよ。でもそこまで言ってくれるなら、もうひとつ教えてもらおうかしら?」
「何でも聞いて下さい」
「海凪君が成し得たいと思っている夢は、何?」
いつもの質問に、思わずふっと笑みが零れる。
「それは秘密です」
「もぅ。何でもって言ったのに、嘘付き」
ぷくっと頬を膨らませる姿に、羅井はぷっと吹き出した。
「あははは。すんません。でもちょっとは、謎めいた部分を残しとかなあかんでしょ? ミステリアスな男はモテますから」
「海凪君はもうモテてるじゃない。だから私は、色んな女性に妬いているのよ」
「またまた~。でも華琳さんて、見た目によらず可愛いとこありますよね」
そう言って羅井は真剣な目で華琳を見る。自分の頬に触れたままの手を掴み取み、ぐいっと引き寄せ唇を奪った。
まさかに、目を見張り体を固まらせる感覚が分かった。
閉じていた目を開け、少し意地悪く笑う。
「こう言うとこ、とか」
「海凪君のいじわる」
からかわれたと思った華琳はハッとなり、拗ねてぷいっと顔を逸らす。
これこそが本当の彼女の姿――。偽りのない可愛い素顔に、つい大きな声で笑い出してしまった。
「そう言う可愛いとこ、俺は好きですよ」
「年上の女性をからかうと、痛い目見るから」
めっと、まるで小さな子を窘めるように言って、膝の上から下りる。
「もう行ってしまうんですか?」
「えぇ。私もちょっと用事があって」
「そりゃ残念です」
すっかりいつもの霞猫に戻ってしまい、ちょっとからかい過ぎたか? と思う。しかしつい本当の彼女を見たくてからかってしまうのだから、我ながらガキやなぁと心の中で苦笑した。
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