forget me not...

1/1
前へ
/55ページ
次へ

forget me not...

君が遠くへ引っ越しになって お父さまがご栄転、拍手喝采の中出発の日 君は一度も振り返らず、車の中で俯いていた。 わたしは必死で手を振りながら車を走っておいかけた。 3年後、今度はわたしが車の中。 知ってた人たちよさようなら。 君もいない。 沢山の拍手の中遊びに来てねと声の限りに叫んだ 誰も知らない場所にまたわたしも同じように 行くんだよ ヒーローごっこをしたね、 倉庫の扉を牢屋に見たてて、 捕まってるわたしを必ず助け出してくれて 一緒に脱出するの お転婆なわたしを唯一ヒロインの役にしてくれたよね 君の前ではお姫様でいられた レンゲ畑もおじいさんが稲穂をくれた おたまじゃくしの田んぼも 秘密基地をつくろうとした赤土山も 永遠にさようなら 記憶をくれて有難う いつも想ってしまうの わたしはいっつも風みたいに その土地に慣れたら次の土地に連れてかれるの 誰も思い出してはくれないよ みんな子どもだもの わたしは変わった子どもで小さな頃から記憶が強く みんな忘れてしまう事も覚えてしまうから 幼稚園の先生から 演劇会の主役に選ばれた だから きっと わたしだけ、わたしだけ 覚えている わたしだけ わたしだけ 過去を見ていて みんなの記憶からは消えちゃうんだ だってほらみんなと居たかったのに卒業アルバムにすら居ない 名前で呼ばれなくなったよ 無機質な苗字の記号が名前になったよ 〜ちゃん、て言われなくなったよ、 クラスでわたしだけ。 方言が違うと友達にはしてくれにくいみたい 方言が違うとイライラするみたい 新しいお人形に飽きたら虐めて遊ぶ 子どもってひたすら残酷になれるんだね わたしの名前は何だったっけ 誰にも呼ばれないからわからなくなってくる forget me not 勿忘草(わすれなぐさ)の、ブルー 私を忘れないで 私を忘れないで。 遠くに行っても 大人になっても 私と仲良くしてくれたこと、どうか 忘れないで
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加