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 翌朝は五時半に起きた。  両親はまだ寝ている。  僕はできるだけ音をたてないようにして着替えをした。虫捕り箱を抱えて外へ出た。  すでに朝陽が差し込んでいる。  気持ちのいい朝だった。 「ちょっと、あんたどこ行くの?」パジャマ姿の母親に呼び止められた。母親は虫捕り箱を見ている。「もう虫捕りはしないって、お父さんと約束したんでしょ? もう破るの?」 「違うよ。全部、森に逃がすんだよ。だから、これから<のっぽクヌギ>まで行ってくる」 「あんた、バカだねえ。逃がしても、虫好きの子たちの見つかったら、元の木阿弥だろ」 「そうじゃないんだ」僕は首をふった。「悪魔の楽園へ行くんだよ。って、言ってもお母さん知らないよね」 「悪魔の楽園?」 「うん」 「また、妙なことを言い出して、この子は。怖くないのかい?」 「もう明るいから平気さ」 「しょうのない子だねえ。わたしも行くから、ちょっと待ってな」  待つこと、五分。  母親は、紺色のジャージ姿に運動靴、首にタオルを巻いて登場した。 「はい、お待たせ。行くよ!」  
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