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「そういえばお母さんがひとりで家にいたときも、同じ子が来たわよ。あなたの部屋へ勝手に行こうとするから慌ててとめたの。友達なんだからいいじゃんってぶつくさしてたけれど……」 「なにそれ、お母さんもひどい目にあったね」  本当よぉ、と母がため息をついた。  もしかして、アクセサリーでも物色するつもりだったのだろうか。 でも私は装飾する趣味がないため、安い腕時計ぐらいしかない。 「けがもなく無事だったし、それが一番よ」 「そうだよね……」 「そうよ、さて夕飯にしましょう。今日は豚肉の生姜焼きとブロッコリーのサラダにするから、お父さん好きでしょ?」  いいねえ、と父が上機嫌になったときだった。  ピンポーンとインターホンが鳴り、外側から玄関のドアをドンドン、ドンドンと勢いよく叩かれる音が聞こえてきた。  おそるおそる、モニターをオンにして私は「ひぃ」とかすれた叫びをあげた。 「ねえ、入れてよ。今日は用意してくれたでしょ?入れてよ、入れてよ、入れてよ入れてよ入れてよ入れてよ入れてよ入れてよ入れてよ入れてよ入れてよ……」  モニターの向こう側で、白いパンプスを脱いで、その踵でドアを叩きつつ、あいつがにやにや笑っていた。
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