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揺り籠
愛されたいと思った。
愛されるとも思った。
暗い海の中をただゆらゆらと揺蕩いながら、わたしはぼんやりと甘い夢を見ていた。
肌に染みこむ水は柔らかく、時折聞こえるさざなみはまるで子守歌のようにわたしの意識を包み込んでいく。
前も後ろも、指先さえ見えぬ暗闇だというのに、不思議と恐怖は微塵もない。
ゆらり、ゆらりと。
この力なき体は、大いなる海を流れていく。
わたしを繋ぎ止めているのは、闇の向こうに伸びる一本の糸だけだ。どこに繋がっているのかも分からないのに、わたしはその儚い一本がひどく大切なもののように感じられた。
細い糸から、遠く木霊するさざなみから聞こえる音は、私には理解出来ない。ただ、内に溜まって静かにゆっくりと増殖していく。
増えて、増えて――。
わたしの中を愛しい音で埋め尽くしてもなお増えて、抱えきれなかった音が爆発するように溢れ出す。
煩いと思ったそれは、私の口からこぼれ落ちていた。
白い、白い病室の、目も眩む光の渦。
分かち合った魂が、肌に触れる。
――あぁ、母様。
はじめまして、母様。
どうかわたしを、愛して下さい。
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