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木漏れ日は黄昏という金粉を、葡萄の葉のギザギザとした輪郭の淵から、絶え間なく降り注ぎ、それはそれは極楽と見紛うばかりの美しさだ。
葡萄の粒は嗤う。少年に何かを囁くように或るものは優し気に、或るものは恨めし気に、葡萄の一粒一粒は淡く光りながら、少年にそうやって囁き続ける。
「さあ、こっちへ」
「おいで。おいで。」・・・。と。
静かな葡萄園を一陣の風が、静寂を切り裂くように通り抜けてゆく。秋の終わりの冷たい風だ。ひんやりとした、硝子のナイフの一振りのような痛い風だった。
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