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「そんな!だって引き出しの鍵は今日はずっとここみ会長が持っていたし、実際、今引き出しには鍵がかかっていてここみ会長が鍵をつかって自分で開けたじゃない?どうやって引き出しの中に生徒会長印を入れたっていうの!?」
音緒の叫ぶ様な疑問に、明日架が微笑みながら答える。
「そう。その鍵は特殊な製法で作られていて複製は不可能ですわ。それに、鯉のぼりの企画書が提出されるのはゴールデンウィーク前最後の登校日。その日には生徒会長印がなければならないし、その他にも何かで必要となるかもしれません。例えば、突然衆議院が解散するかもしれませんわ。いざという時に会長印がなくては困りますもの。
ですので、拝借するのは今朝ここみ会長が登校する前にしたんです。ただ、音緒副会長。鍵の秘密の隠し場所を知って、引き出しを開けて生徒会長印を拝借した後に、私が何も仕掛けをしないとお考えですか?」
窃盗ではなく拝借だと暗に主張する明日架の話を聞き、ここみは何かを思いついた様に再び引き出しを勢いよく開ける。
すると、鍵穴の真裏、引き出しの内側に目立たない様に木目シールが貼られた見慣れない何かがついており、一切手を触れていないにも関わらずまるでポルターガイストの様にL字型のフックが動いた。
「さすが会長。大正解。つまりこういうことですわ」
明日香は微笑みながらスマホを手に取り画面をタップした。
すると、引き出しに取り付けられた装置が動く音とともに、引き出しの鍵のL字型フックが出たり入ったりした。
音緒はそれを見てハリウッド女優の様な驚きの表情を浮かべながら明日架に向き直る。
「てってれー!スマートロックでーす!便利な時代になりましたねー!L字型の金属を動かすための超強力磁石仕様!!ロックの中で磁石が回転して、フックも一緒に動かす仕掛けです!
つまり、万が一にも解除音がバレない様に扉を叩いて音をかき消しながら明日架が廊下で引き出しを解錠しておいて、私がよろけてデスクに近づき引き出しを開けて生徒会長印を引き出しに戻し、その後明日架が再びスマホで鍵をかけたんです!ほら!画面上で施錠の状態をチェックできるんですよ!」
寧衣良は明日架の肩に右手を乗せ、満面の笑みを浮かべた。
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