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「それでね、その誤字っていうのがここなの」
明日架はここ数日で読み込まれて古本の様になった、まるで海の様に青い表紙の生徒手帳を胸ポケットから取り出すと該当のページを開き、ラメの入ったネイルを施した爪で文をなぞる。
『部活動の新設について>
部活動の新設の際には、有意義な学苑生活を送るために明確な目標・活動内容を掲げた上、申請人を含め、最低部員数2人を盛って、生徒会長だけが持つ会長印による許可を盗り、可決される』
寧衣良はいつの間にか口にしていたレモン味の飴を口の中で転がしながら目で文章を追った。
「すでに生徒会室から会長印は盗って来たわ。あとは私の他に部員数を1人盛るだけ。だからね、寧衣良にお願いがあるの。この部活動新設申請書に名前を貸してくれない?」
明日架は細かい装飾の入った茶色のレザーの学生鞄から2枚の部活動新設申請書を取り出し寧衣良の前に置いた。
「もちろんタダでとは言わないわ。まず前提としてうちは部活動の掛け持ちが許されているわよね?寧衣良もまだ部活に入っていなかったわよね?そして将来の夢、探偵になりたいって言っていたわよね?探偵になるにはミステリーを研究しなくちゃって言っていたわよね?でもこの学苑にはミス研が無いってぼやいていたわよね?」
明日架は焦げ茶色の瞳を輝かせながらクエスチョンマーク一つごとに寧衣良に詰め寄る。
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