epilogo

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人は、みんないろいろな事を経験しながら今を生きてるんだろうとぼんやり思った美砂。 自分だけが不幸を経験したわけじゃなくて……でも確かに心が捻じ曲げられそうな辛い事もあったけど。 その中で人を憎んだり誰かを不幸にはしたくない。 自分は、誰かを助けられる人になりたい。 健との生活の中で、光の差し込むことのなかった感情に陽があてられる。 心からもう二度と怒りの(ほのお)が零れることはなくなった。 今度は代わりに、暖かい愛情が溢れ出そうになる。 隣で横になってそっと頭を撫でてくれる彼を大切にして生きていきたい。……全てのものから受けた愛情を無駄にしたくない。 美砂はそう思うと、気だるい身体を湯島に近づけてぎゅっと抱きしめ、朝の光と幸せに包まれたのだった―― ◇◇◇◇◇ そんな美砂と透也が、幸せの絶頂に向かって突き進んでる時間。 不自然に山間に停められた車から男女二人の遺体が見つかった。 死亡してからだいぶ経っていると見られ、車内の様子から警察は煉炭をつかった自殺だと判断した。 死亡者の名前は、伊吹 晶也と希利子。 晶の実の父親と、義理の母親だった。 遺書には、事件で自分たちの娘が行った犯罪に対する懺悔と謝罪が書かれてあり、希利子に至っては、晶の思春期に対してとった自分の態度を後悔しているということが書き綴られてあった。 山の中、暗い道に置かれた車内は腐敗臭が充満し、すでに遺体は人の形を成していなかった――
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