prefazione

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┈┈┈┈忘れもしない。 12月24日。 当時19歳だった美砂は友達の紹介で出会った初めての彼氏と関西に旅行に来ていた。レンタカーを借りて、年上の彼氏は頼もしく、まだ未熟だった美砂に教示するかの如く自分の知識をひけらかして巡る土地の話をしてくれた。 その晩にまさかこんなことになるなんて誰が想像しただろうか? 「ねえ、なんで生理なの? 」 彼の一言。 「だって…………ごめんなさい」 急になってしまったのだ。 生理になんでもへっちゃもない。 だけど、その時付き合っていた彼氏は旅行の1晩目にそんな言葉をなげつけてきた。 「は〜。できるとおもったのに」 思い切り大きなため息をつかれ、美砂は慌てた。困惑したのだ。 自分は初めての体験になる予定だったのに、彼氏のご機嫌を損ねてしまった。ただそれだけで美砂の心が陰鬱になる。 「ごめんね。ホントにごめんね」 何度も謝った。 謝られた彼は、まるで真夜中に捨てられた仔犬のように悲しい目付きをした。 その姿は未だに目に焼き付いている。 「じゃあさ、いいや。口でやって」 突然の提案だった。 美砂はびっくりした。そんなのしたことが無かったから。一瞬泣きそうになる自分にムチをうって、今まで見たことも無いものを視界に入れる。震えながら手を出す。 泣きそうになりながらした。 懸命に。 吐きかけても続けた。 でもなるべく嫌がる素振りを見せずに。 「ねえ、マジではじめてなの? 」 途中でそう言われた。 そこから彼にやり方を教えてもらう自分がとても幼稚にプライドのない人間に思えた。 今から思えば、その時に疑問を持つべきだったのだ。もう遅いけれど。
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