Capitolo 13

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向かって左からの人物達の名前は――― バルトロマイ 小ヤコブ アンデレ イスカリオテのユダ ペトロ ヨハネ イエス・キリスト トマス 大ヤコブ フィリポ マタイ ユダ タダイ シモン ―――この中にユダは二人いるのだ。 そして12番目は――― 「美砂、ユダ・タダイについて知ってるか?」 湯島が問うと美砂はまた頭を横に振った。 ―――そうか。 キリストへの誓いを交わした中、【犯罪の汚名】を被せられた人物――聖人でいる事を許されなかった聖人。 「美砂、ユダという名前は12使徒の中で二人いるんだよ。一人は有名な裏切り者のイスカリオテのユダ。ほら、裏切りの報酬の銀貨が入った袋を持ってるだろ? そしてこの絵の12番目に描かれている人物も、ユダって名前なんだ。」 「へえ?」 「正式にはユダ・タダイ。結婚式の日にイエス・キリストと出会った聖人なんだよ」 「そ、そうなんだ……?」 分かってないな。美砂。 結婚式の日に彼は、聖なる道を得たのだ。 湯島は彼女の顔を見つめた。 「たしか、別の名前を【忘れ去られた聖人】っていうんだよ」 「忘れ去られた……?」 「そう。同名であるユダの裏切りが表に出てしまって、同じ名前だからと言うだけで裏切り者だと疑われ、敬われることがなくなった聖人だよ。宣教したアルメニア地方以外ではほとんど、な……まず彼の記念日を調べてみよう」 美砂は唖然とした顔で湯島を見つめていた。 その間に彼はスマホをタップする。 記念日は二つあった。 カトリックでは、10月28日。 正教会では、6月19日。 どっちだ? カトリックと正教会の違い……。 ここにもなにか理由が――トリックがある筈だ。 湯島は視線を画面から外して、目を瞑った。 そんなに宗教に慣れていない男の仕掛けたパスワード。 分かりやすい筈だ。なにか決定的な何か…… 「あっ!!」 「なにっ!?」 湯島の声に飛び上がりそうなほどビックリした美砂。 「美砂、美砂だよ! ミサ! これはカトリックだ! 1028……」 「なんでカトリックって分かるの!?」 「いいから。とにかくあとの二桁……」 正教会で【ミサ】とは言わない。おそらくカトリックのほうで間違いないだろう。 「後のふたつは12だと思う……よ」 ボソリと美砂は呟いた。 「そう思うんだな? じゃ、102812。入力してみて」 美砂は勢いよく頷くと、タップした。 1028と、12。 おそらくそうだろう、と湯島も思った。 美砂との思い出の数字。 ――すると 画面が明るくなり、時間とともに開いた。 「やった! 解除できたっ!」 「できたか……」 湯島はほっと息をついた。 「あ、でもほとんど充電が……ない」 「中に何が入ってる?」
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