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向かって左からの人物達の名前は―――
バルトロマイ
小ヤコブ
アンデレ
イスカリオテのユダ
ペトロ
ヨハネ
イエス・キリスト
トマス
大ヤコブ
フィリポ
マタイ
ユダ タダイ
シモン
―――この中にユダは二人いるのだ。
そして12番目は―――
「美砂、ユダ・タダイについて知ってるか?」
湯島が問うと美砂はまた頭を横に振った。
―――そうか。
キリストへの誓いを交わした中、【犯罪の汚名】を被せられた人物――聖人でいる事を許されなかった聖人。
「美砂、ユダという名前は12使徒の中で二人いるんだよ。一人は有名な裏切り者のイスカリオテのユダ。ほら、裏切りの報酬の銀貨が入った袋を持ってるだろ? そしてこの絵の12番目に描かれている人物も、ユダって名前なんだ。」
「へえ?」
「正式にはユダ・タダイ。結婚式の日にイエス・キリストと出会った聖人なんだよ」
「そ、そうなんだ……?」
分かってないな。美砂。
結婚式の日に彼は、聖なる道を得たのだ。
湯島は彼女の顔を見つめた。
「たしか、別の名前を【忘れ去られた聖人】っていうんだよ」
「忘れ去られた……?」
「そう。同名であるユダの裏切りが表に出てしまって、同じ名前だからと言うだけで裏切り者だと疑われ、敬われることがなくなった聖人だよ。宣教したアルメニア地方以外ではほとんど、な……まず彼の記念日を調べてみよう」
美砂は唖然とした顔で湯島を見つめていた。
その間に彼はスマホをタップする。
記念日は二つあった。
カトリックでは、10月28日。
正教会では、6月19日。
どっちだ?
カトリックと正教会の違い……。
ここにもなにか理由が――トリックがある筈だ。
湯島は視線を画面から外して、目を瞑った。
そんなに宗教に慣れていない男の仕掛けたパスワード。
分かりやすい筈だ。なにか決定的な何か……
「あっ!!」
「なにっ!?」
湯島の声に飛び上がりそうなほどビックリした美砂。
「美砂、美砂だよ! ミサ! これはカトリックだ! 1028……」
「なんでカトリックって分かるの!?」
「いいから。とにかくあとの二桁……」
正教会で【ミサ】とは言わない。おそらくカトリックのほうで間違いないだろう。
「後のふたつは12だと思う……よ」
ボソリと美砂は呟いた。
「そう思うんだな? じゃ、102812。入力してみて」
美砂は勢いよく頷くと、タップした。
1028と、12。
おそらくそうだろう、と湯島も思った。
美砂との思い出の数字。
――すると
画面が明るくなり、時間とともに開いた。
「やった! 解除できたっ!」
「できたか……」
湯島はほっと息をついた。
「あ、でもほとんど充電が……ない」
「中に何が入ってる?」
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