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画面は、無機質な壁紙だった。
そこにはメールと写真リストが存在している。
要らないものは、ほとんど消したようなシンプルな画面だった。
「写真があるな。中には何が入ってる?」
湯島に言われてタップする美砂。
中には一枚の写真と……動画?
咄嗟に動画をタップする。
その間、味わったことの無い緊張が湯島との間に流れるのがわかった。
―――最初に映ったのは、一人の横向きの女性……全身……スーツ姿。遠目だな。
「あ、……これ晶さんかも……」
髪の毛の長さとスレンダーな雰囲気。
きっと彼女だ。
美砂は直感でそう思った。
「そうなのか?……見えづらいな」
湯島が眉根を寄せる。
これはいったい何を撮ったの?
美砂は顔を近づける。
その女性は何かの前に立っていた。
倉庫? 建物?
横から少し形が見えるけれどハッキリしない。白っぽい色のなにか。
すると、突然ぐっとズームされた。少し角度が変わる。荒い画像になったけれど、おかげでようやくそれが何かわかった。
駅前で見かける大型のキャリーバッグが入りそうなロッカーだ。彼女はその一つを開いて、紙袋らしきものをいくつか出して、中身を確認するような仕草をした。
そこで動画は途切れていた。
「これなに……?」
「……おそらく、証拠だろ」
湯島は手を伸ばしてタップし、写真に切替える。
するとレシートらしきものが一枚映っていた。
「これは……」
――東線無人ロッカー 4番区域
[取り扱い内容]
領収及び ロッカーNoと暗証番号
このレシートは大切に保管してください
取り出し時に暗証番号が必要になります
ボックス 0184
11月5日 15:08
料金 12000円 領収いたしました
暗証番号 08279071―――
短いものに印刷されているそれ。
これは……。
「きっと……金の隠し場所だ」
湯島が自信ありげに言ったのだった。
「おかね……」
「メールにはなんてある?」
素早く湯島がまたタップする。
そこには一通だけのメール。
受信もゴミ箱の中も空っぽだけど、未送信のところに一通。
―――晶の監視を乗り越えるためにこれを託します
大きな罪によって、誰の人生も破壊されてはならない
君の幸せを願ってます―――
「これ……」
「美砂、この意味がわかるか?」
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