Capitolo 13

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大きな罪って……? 実の弟を殺した事だろうか? 「美砂、きっと健さんはこのスマホの中身を晶さんに見られてはならないと必死だったんじゃないかな? 」 晶には、絶対に解けない番号にしたのだ。自分の本心を暗証番号にした。 「そして、君との生活で腐った自分と対面し続けたんだと思うよ。ここからは俺の想像だけど、君と出会って、結婚して、初めて人間の素直さとか……善意やモラル、愛情ってものを目の当たりにしたんじゃないかな」 「……誰の人生も壊される事が……っていうのは……」 「君への気持ちだよ」 美砂は黙り込んだ。 全てがハッキリと繋がったような気がした。 健が結婚生活でとった態度。 病室で聞いた彼の証言。 東野の言葉。 葬式でのムービー。 景子の事件。 彼も、結婚生活で苦しんでいた……。 そこまで考えたとき、涙が滲んだ。 また後悔の念が押し寄せてくる。 相手を幸せにしたいという意志がない結婚。 相手が嫌いだからと心に蓋をして。 避妊薬を飲んでまで偽った。 彼に対して踏み込んでぶつかろうとしなかった。 なんて…… なんて自分は稚拙だったんだろう。なにもかも受け身で。 やっぱり悪いのは相手じゃない。人生の責任は自分にあるんだ。結婚すれば親が安心すると思った。正しいと思った。幸せにしてもらえるかもと思った。でもそれは全て他力本願で。 離婚するときもそう。 逃げるようにして、きちんと話をしなかった。 相手が悪いと心で思って、実際は……自分に全て責任があるんじゃないだろうか─── 「……私は子供だったね」 美砂は目を伏せた。 「美砂……」 「彼の思いを無駄にはしたくない。明日これを持って警察へ話をしに行って来る。今までのことも全部話すわ」 決心した。 ここで弱い自分でいたらきっと後悔するから。生まれ変わりたいから。 この世で変えられるものは、きっと自分だけ。 「……反対はしないよ。それがいい。何があっても俺がついてるからな。何かあったら相談してほしい」 「……ありがとう」 美砂はそっと涙を拭いた。 その晩、湯島はずっと眠るまで抱きしめてくれたのだった。彼の体温はとても安心する……彼と一緒になりたかったら今のままの自分じゃダメだ。 その夜はほとんど眠れなかった。すぐに朝は訪れたのだった───   翌日早朝。  お店に連絡をいれて、急遽お休みをもらい、美砂は警察へと出向いた。担当者だという刑事二人に出会い、丁寧に今までのことを話したのだった。彼らは、真摯に聞いてくれて、健のスマホも手渡した。 「ご協力ありがとうございます。いまこちらが把握している事件の詳細を話すわけにはいきませんが、これは大きな手がかりとなると思いますよ」
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