Capitolo 13

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「あの……山口景子さんは……どうしてますか?」 美砂は気になっていたことを訊いた。 「取り調べにも応じて素直に答えてくれてますよ。心配はいりません。お元気です。それより、おひとつお尋ねしたいのですが、健さんのお葬式前に晶さんからお電話もらってらっしゃいますよね? あなたは」 一人の刑事が美砂の顔を、なにかを狙ったような厳しい眼光で覗き込んだ。 「はい。健さんが亡くなったことを教えてくれました」 「……そうですか。それだけですか?」 「はい。式の予定など詳細を教えてくれたんです。健さんは私にも参列して欲しいと生前仰っていたので」 「……なるほど。そうですか。わかりました」 「あの、景子さんと面会って……出来ないんでしょうか?」 「今は弁護士以外は無理ですね。御家族のみ差し入れなどは可能ですが」 「そうですか……」 美砂は口を閉ざした。 その後、ありがとうございます、と会話は締めくくられたのだった。 あれからずっと気になっていた。 あの歳でお金も晶にとられて、殺人で逮捕された人間はいったいどうなってしまうのか。海外に行っていた旦那さんは、帰国したのだろうか? 亡くなった晶さんのご両親はどう思ってるのか? 自分には知る手だてがない。 気にはなるけど……。 今回の自分の証言でなにか……真実を伝えられたらいいのだけど。美砂はそう思って閃いた。 「あ、あの……!」 背中を向けて署内の廊下を歩き始めていた刑事二人にむかって美砂は声をあげる。 「どうしましたか?」 「思い出したんです! 健さんが以前、私と二人で住んでたマンションに盗聴器を仕掛けてたって言ってました! 晶さんの指示で」 「盗聴器、ですか?」 美砂はその時のことを喋った。大切な事だ。 刑事はそれを冷静に最後まで耳に入れたあと、「わかりました。参考にさせていたたきます」とそれだけ言ったのだった。 呆気なく終わった。 もっとドラマみたいな展開を期待していたのに。反応も何も無く、こんなものなんだろうか?
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