Capitolo 13

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美砂は目を白黒させた。 「女の子の一人暮らしなんて危ないしだめだ。美砂はかわいいし、いつ変なヤツに襲われるかわからないから」 真面目な顔で諭してくる。 「あのさ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう……でも頼れない。申し訳ないし」 「どうして頼ってくれないんだ? 今日だってすごく心配してたんだぞ? もし変質者やイノシシに襲われたらどうする?」 変質者は分かるけど、イノシシはない。 「俺は心配すぎてきっと仕事に支障が出る。それは困るから受け取ってくれ」 彼の必死ないいわけ。 美砂はとりあえずそっと右手を出して鍵をうけとったのだった。 「無理しなくていいから……美砂が本気で俺の事を想ってくれる日を待つよ」 私は本気ですけど……と言いかけて、ぐっとなにかの力で止められたような気がした。 「愛してる」そんな言葉がもう気安く出てこない自分に気がつく。どうしてだろう? 湯島は「荷物はどうする?」と訊いてきた。気持ちを考える間もないまま、美砂は「まず両親に話をしないと」と答えたのだった。 すると、湯島は会って挨拶がしたいと申し出てくれた。 挨拶……。 美砂は、ふと黙り込み彼から視線を外した。 「ダメ……かな?」 少しおどけるような口調で訊いてくる。「大丈夫だよ」と言いたいけど、もし会って挨拶ってなったら…… ううん。 ちがう。 自分の気持ちはどうなんだろう? いつも頭で考えて誰かが傷つかないようにして生きてきた自分を変えたいと願ったところじゃないか。 自分の気持ちは…… 彼のことが好き。 「そうだね。一度親に都合訊いてみる。荷物も徐々に運び出すわ」 その言葉にパァっと嬉しそうな彼の顔が見えた。 「そっか! 荷物は良かったら俺も手伝うよ。なんでも言って欲しい」 抱きしめられて言われると、美砂の心から素直に甘えたい気持ちが出てくる。彼の広い背中に手を回して温度を確かめた。 「うん、でもそんなに荷物ないから……」 そう言いかけた唇をそっと重ねて、湯島は「なんでも言って」と耳元で囁いたのだった。 どうしてだろう。今まで理性で考えていたものが崩れ始め、こんな少しの温もりから、美砂の中にもっと彼を近くに感じたいという気持ちが芽生え始めていた。
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