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きっとそれは、彼がいつも思いやりの心があって、自分のことを大切にしたいと思ってくれてるから。愛情を持って両腕を広げてくれてるのを感じる……。
男性からそうされると、こんなに幸せな気持ちになれるんだ……。
美砂は、ぎゅっと抱きついている腕に力を込めた。
「いつもありがとう」
首筋に向かって囁く。
「美砂さん?」
湯島は低く声を漏らした。
「ん?」
「理性が飛びそうですけど」
そういうなり、素早く彼はソファに美砂を押し倒した。
「ちょ、ちょっと」
「誘ったのはそっち」
「あ、あの、いま昼間なんですけど?」
「大丈夫。すぐに終わるから」
言いながら美砂の首筋にキスをして手は下半身まで伸ばされる。
「か、会社は?」
「うん。終わったら行くから」
ゆっくりと太ももを撫でられ、美砂は力が抜けた。深い口付けをすると、途端に頭が働かなくなる。まるで深い霧の中に誘われるかのような感覚。脳内の一部が停止してしまって判断出来ない自分が顔を出す。
男の人に抱かれるというのは、こんなにも受け身になれるものなのか……。この感じは悪くない。
美砂はそのまま彼に身を委ねた。
暖かい彼の香りと安心できる声にのまれていった……。
◇◇◇◇
友人の恵から連絡があったのは、その日の夕方だった。湯島の家を一旦離れて家への帰り道。
久しぶりにスマホのディスプレイにその名前が表示されたとき、美砂の胸は大きく音を立てたのだった。
恵もあの件をニュースで見たのかもしれない。
そんな事をぼんやりと思いながらスマホを耳に当てた。
『もしもし! 美砂? 元気してるの?』
元気そうな恵の第一声。
「元気してるよー」
たくさん話したいことがある。そんな思いを込めながらそう返した。
『言いにくいんだけど、ニュース見ちゃった。どうしてるのかと思って心配でさ』
ああ、やっぱり。
『これ絶対美砂のことだって思うと、いても立ってもいられなくて連絡したの。ごめん』
恵らしい率直な言い方に足を止めて思わず笑ってしまう。
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