Capitolo 14

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――美砂は、街の片隅で、スマホから文字を入力して検索しようと思った。 しかしそんな事をしなくても、ニューストップの文字が見えた。 【葬式惨殺事件 容疑者の素顔】 美砂の右手が微かに震える。 指先が、凍結したかのように動かなくなって、息が止まった。 容疑者……この表現。 それはきっと景子の事だろう。 こんなニュースの真上に出てくるなんて信じ難い。世間はなんと報道してるのか? 指を震わせながら、そこをタップした。 《――山口 景子容疑者は、日本刀所持についてこのように述べている。「先祖から授かり家にあったもの」(警察関係者証言) 今回の犯行は、用意周到に行ったとは言い難い。感情的に走り、引き起こしたものだと感じる。 いくつか疑問点が見えてきた我々は、当時健さんと晶さんが住んでいた高級マンションへと足を運んだ。 それは、一般人が購入出来るようなマンションではない。近隣には某有名人や政治家親族など富裕層がちらほらと住んでいる。界隈には――》 あまりにも赤裸々に書かれている内容に美砂の心臓は破裂しそうなほど打ち始めた。ドクン……ドクン……とてもじゃないが、読み進められない。 これは、一体、どういう人間が書いてるんだろうか? 美砂は記事の下へとスクロールした。 そこにはたくさんのコメントが見える。 《このお金はどこから出てきたんだろう? 前嫁とは雲泥の差の住まい!》 《不明な点はとにかくお金ですね。お金が人間を変えてしまう。でも晶さんが可哀想。ほんとに性犯罪に巻き込まれたんだとしたら、最期にこれでは浮かばれない》 前嫁……性犯罪……? 真実が…… みんなはどこまで知ってるの? 美砂は他の見出しをタップする。 次に見えた記事にはこう書かれている。   《――山口 景子容疑者の夫である孝宗氏は、海外青年協力隊員を勤め、現在では発展途上国の所長を経て、様々な国にインフラ設備など貢献をしてきた輝かしき経歴がある。  しかし、家庭においてはいわゆる放任主義だったようだ。    とある関係者はこう話す。 「一年に一度でも奥さんや子供の顔を見たいのが当たり前なのに、彼は長期休暇をもらっても帰国しようとしませんでした。なぜか、と問いかけたことがあるんです。そうすると、彼はこう答えました。『ここにいるほうが自分の性に合ってるから』と。まさかこんな事件が起こるなんて考えもしなかったです」  彼の家庭を顧みないツケが回ってきたというわけか。 事件の真相を知りたく、我々は彼に突撃取材をした。 ───今回の事件についてどう思っていらっしゃいますか? 孝宗氏 「特に話すことはありません」 ───二人の息子さんがこのような形で亡くなられて、今後どうするおつもりで? そう問いかけると、記者を睨みつけ、足早に車に乗り込み去って行ってしまった。 被害者である晶さんに対しても何の言葉もないまま、である。まさにこの事件はこの家庭の闇によって引き起こされたと断言してもいいのではないだろうか?》 まるで知ったような口ぶりの文章。
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