Capitolo 14

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こんなふうになんでも暴かれていってしまう現実が、美砂の眼前に広がり、目眩を覚えた、 義父であった孝宗にはほとんど会ったことがない。海外でその仕事についているという話までは知ってはいたが。 今の世の中、調べようと思えばどんな人間でも土足で入り込めるんだ……。 少し現実に頭がついていかなくて、何も考えたくなくなってきた。放棄したくなる。 きっと自分のことも好きに書かれていることだろう。 前嫁、なんて表現をされているけどきっと住所だって割り出されてるに違いない。 ……やっぱりこれは……誰にも迷惑はかけられない。 美砂は、これ以上画面を見ることに抵抗を感じた。けれど、きっとこの先ずっと気になるんだろう。自分のことだから。 そう言えば、晶についてはなにも書かれてはいないのだろうか? 結婚していないということは……? 単なる被害者? どう言われてるのか? 深掘りしている記事はないのだろうか? 美砂は彼女の名前を【伊吹晶】とフルネームで入力してみた。 すると、すぐに【惨殺事件】と出てくる。 そこに気になる記事が一つあった。 《――被害者である伊吹 晶さん 彼女は、幼少期を田舎で過ごし、両親の離婚を幼い頃に経験している。父親の転勤をキッカケに引越した先で、山口健さんと知り合ったようだ。学生時代は家庭教師をしてもらっていた仲らしく、当時を知る近所の人は、我々にこう話をしてくれた。 「晶ちゃんは昔からよく出来るお嬢さんでしたよ。なのにこんな事になってしまって……昔から本当に健さんと一緒にいるのをよく見かけましたけどその時は幸せそうで。学生の相思相愛みたいに見えました」 相思相愛……だとすると、一度目の健さんの結婚で何があったのだろうか? 最初の式場での証言では「山口姓」 を名乗る配偶者としての彼女の姿があった。 だが今は籍を入れない事実婚として語られている―――》 そこで美砂は、そっと目を伏せた。 やはり伊吹 晶と出てくる。 どうして婚姻関係でなかったのか? 書類が間に合わなかった? いくら考えても分からない。 ……一旦やめよう。 スマホをしまって、再び歩き出した。とにかく両親に家を出ることを告げないといけない。 きっと、何も言わないけれど日々のニュースは見ているはず。 健が最後に言った、お金300万円は既に美砂の口座に振り込まれていることが少し前に分かったところだし。 大丈夫。一人でやっていけるはず。 湯島の申し出は有難いけれど、少しこの報道熱が収まるまで待った方が良いに違いない。
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