prefazione

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その当時の彼氏、山口 健と結婚した美砂に子供はまだいない。夫婦二人で静かな生活を送っている。 美砂は、今も寝室でグーグーとイビキをたてて横になっている旦那に目を向けた。去年から通い始めたジムで体作りをしているせいか、ちらりと見えるお腹の引き締まり具合がすごい。 夜のほうも頑張ってくれる。 正直、嫌になってる。 「あまり濡れないね」なんて言われるのは毎度のことだから慣れっこ。 他に確かめたことがないから知らないけど、男性ってみんなこんなんなんだろうなと諦めの境地で美砂は自分のモノクロの【性】の世界を見ていた。 とにかく健の押しが強くて「別れたい」と付き合っている時に訴えてもダメだった。 「君は若いから知らないだけ」 「そのうち慣れてくる」 「男女の付き合いは苦しみもある」 と言われて根負けしてしまったのだ。 いつも自分が泣きべそをかくはめになる。 そんな美砂に、「思ったことを伝えるのはいい事だ。もっとぶつかってきて」と健は言った。 彼と行為をしたあとは、必ず痒くなって産婦人科へ行くこととなる。ストレスからくるカンジダ症と先生からは診断されて、薬を中に入れられる。これは性病ではないのだと説明された。 性病じゃなくても、こんなの妊娠どころじゃない。薬の服用が暫く続くのだから。 男性なんて良いもんじゃない。 それが自分の出した人生の結論だった。 男性とお付き合いするという事は、山登りかフルマラソンに似ている、と美砂は思った。雲がかっていて頂上が見えない、けれどもいつか幸せの場所に辿り着くだろうと思って必死に歩むのだ。 美砂はまだ知らなかった。 全ての男性がそうではないということが。 ┈┈┈┈そう。 あの日が来るまでは。
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