迷子の初恋

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 失敗した。  家に居たくないからと、ゴールデンウイーク真只中の大型ショッピングセンターに来てしまったのが運の尽き。自動ドアをくぐった瞬間。いつもの倍は向けられる視線の多さにため息を吐く。  ……動物園のパンダもこんな気持ちなのだろうか。  ふと、そんな考えが頭をよぎる。  まぁ、考えた所で動物と会話が出来る特殊能力なんて持ち合わせていないから答えなんて分からない。そもそも前提がおかしかった。  馬鹿な事を考えてしまったと自嘲して、不躾な視線から逃れる様に足を動かす。  とてつもなく居心地が悪いが、せっかく出てきたのだ。少しくらい楽しまないともったいない。  だからと言って明確な目的があったわけではないのだ。結局私は当てもなく、ひたすら歩き回るはめになった。  ……このままいけば今日もまたデカさが売りのショッピングセンターを踏破する事になってしまう。  それはそれでアリだけど、毎度同じでは芸がない。丁度お昼時だし、何か食べながら考えるか。  …………何度来てもここのフードコートの規模は他の場所とは桁違いだ。ついでに客の数も桁違い。いつも賑わっているものの、今はゴールデンウイーク中、しかもお昼時だ。家族連れやカップル達が熾烈な椅子取りゲームを繰り広げているフードコートを見ながら、本日何度目かのため息を吐く。  歩き回る前に来ておけばよかったと後悔が募るがもう遅い。  仕方がないからお昼は後で食べよう。  騒がしいフードコートから撤退しようと踵を返して。小さい女の子が一人で佇んでいるのに気付く。それとなく辺りを見渡してみるが保護者らしき存在は見当たらなかった。  放っておいても誰も私を咎めたりしないだろう。ここには女の子の存在を見ないフリして通り過ぎていく人間しかいない。私もその内の一人になるだけ。そもそも見ず知らずの子供に手を差し伸べる程私は優しくはないし、そんな義理もない。だけどその不安そうな顔が、昔の自分を思い出させて。 「ねぇ、大丈夫?」  思わず声を掛けてしまったのだ。
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