迷子の初恋

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 声を掛けたはいいものの、どう対応すれば正解なのかが分からない。取り合えず、比較的空いている店の店員に事情を話して対処してもらえばいいだろうか。 「お店の人に家族呼んでもらうから、もう少し頑張ってね」  頷いた女の子の小さな手を引いて、適当な店に入る。事情を説明すれば嫌な顔一つせず対応してくれた店員さんに頭を下げ、役目は終わったとばかりに店を出ようとして。 「…………どうしたの?」  何故か私の袖をつかんで離さない女の子に困惑する。店員さんに助けを求めたが店員さんも困っている。 「…………いかないで」  ずっと黙っていた女の子が泣きそうな声で呟いた。  なるほど。あんなに人がいたにも関わらず、声を掛けたのは私一人。女の子からしたら私は救世主の様なモノなのだろう。その気持ちは痛い程分かる。  仕方がない、乗りかかった船だ。この子が家族と会えるまでそばにいるとしよう。 「ご家族がいらっしゃるまで私もこの子と一緒にいても大丈夫でしょうか」 「こちらとしては大変有り難いのですが、お時間は大丈夫ですか?」 「はい。用事はもう済ませたので大丈夫です」  嘘だが、まぁ似たようなものだろう。家に居たくなくてここに来たのだから、ここに来た時点で用事は済んだも同然だ。 「ではインフォメーションまでご案内しますね!」  笑顔の店員さんに連れられ、インフォメーションまで歩く。 「わたし、みよっていうの。うつくしいに、おひさまってかくんだよ!おねえちゃんは?」  不安そうな顔から一変。にこにこと笑いながら自己紹介をしてくれる女の子に普段使わない表情筋を使って笑いかける。 「私は光。よろしくね美陽ちゃん」 「うん!あのね、みよね、ゆうにぃとみやときたの!はなれたらだめって、ゆうにぃがいってたのに、みよ、おなかすいてごはんのところにきちゃったの」  今度は眉を下げて悲しそうな顔をする。  ……幼児ってこんなにも感情の起伏が激しいのか。幼稚園の先生とか大変だろうな。  まぁ美陽ちゃんはこんな状況で泣き喚いたりしない辺り、手のかからない方ではあるのだろう。今回はただ運が悪かったのかもしれない。  そっと頭を撫でれば、嬉しそうに目を細められて。何だかくすぐったく感じて、慌てて表情を取り繕った。
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