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ゴールデンウイーク明けの五月六日。いつも通りの時間にいつも通りに登校する。
「高嶺さん今日も綺麗~!!」
「ね!お人形さんみたいな顔で頭も良くて、おまけに運動神経も良いとか完璧じゃん。あーあ、私もあんな風に生まれたかったなぁ。そしたら人生勝ち組でしょ!?」
「言えてる~!!」
人がそうなる為にどれだけ努力したかも知らないでよくそんな事が言えるな。吐き出したくなる苛立ちを飲み込んで、楽しそうに話す見知らぬ女子生徒達の横を素通りして教室に入る。
教室に入ったら入ったで、ショッピングセンター程ではないが多くの視線が私に集まった。
何処に行っても何をしてても。誰かしらの視線に晒される、いつも通りの変わらない日常。
……だったはずなのだけれど。
お昼休み。これまたいつも通り、裏庭のベンチで昼食を食べていた私の前に現れたのは。
「はぁっ!高嶺さん、やぁっと見つけた……!」
私のここ数日の悩みの種である立花君だった。
「何か御用ですか」
驚きのあまり恐ろしく平坦で機械的な言葉が出て肩を落とす。可愛げの欠片もない。
幻滅されたんじゃないかとおかしな方向に行き始める思考にストップをかけて、箸を置いた。
「どうしてもお礼がしたくて探してたんだ。俺焦りすぎてインフォメーションの事忘れててさ。思い出したのがアナウンスが流れた時だったんだ。……だから本当、高嶺さんが一緒にいてくれて良かった。ありがとう。美陽を助けてくれて」
気にする素振りを見せず真摯に頭を下げる彼はやっぱり夕君と同一人物に見える。
…………重症だ。
誰にも話さず、大事にしてきた恋心だけれど。これは流石に酷い。普通に引く。
静かにダメージを食らいながらも、早く会話を終わらせるために口を開いた。
「顔を上げてください。あのショッピングセンターで迷子になった時に助けてもらった事があったので、同じ事をしただけ、」
しまった。余計な事を言った。
硬直する私に彼は一瞬驚いた顔をして。次の瞬間には眩しくて目を逸らしてしまいそうな笑顔を浮かべた。
「やっぱり、あの時の光ちゃんは高嶺さんだったんだな!」
その上この爆弾発言である。
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