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episode1. 前田りょう
所々に上履きの跡がついた床の上に伸びる影。
斜陽が廊下を照らし壁に窓の形をくっきりと映し出す。
わたしは膝丈のスカートを揺らしながら職員室までの道を急いでいた。
4月27日 16:54
高校に入学して20日目。
胸元に抱えるようにして持っていた学級日誌をぎゅっと握りしめた。
「お疲れ様。日誌、ありがとうねぇ」
「あ!いやいや」
クシャッと皺を作って笑みを浮かべる担任にわたしは首をブンブンと振ってみせる。
「前田さん、名前が"りょう"だからてっきり男の子かと思ってたんだよねぇ」
「よく言われます」
わたしは昔から男子と間違われる。
祖母が付けた"りょう"という名前はわたしにとって苦い思い出の1つになろうとしていた。
「それでは失礼します」
「気を付けて帰るんだよ」
担任にペコッとお辞儀をしてから、息苦しい空間から飛び出した。
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