その臭いは古い記憶を呼び起こす

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その臭いは古い記憶を呼び起こす

放課後の校舎。カーテンの隙間を縫うオレンジ色の夕日。部活生徒の喧騒、鳴り響く下校のチャイム。僕一人だけが残った教室のドアの鍵をゆっくり閉めた。 300gほどの重さは僕の心を押しつぶしそうなほどで、過呼吸、冷や汗、体中が全力で僕を止めようとしていたが、震える手でそれをそっと口へ運んだ。 初めて舐めた好きな子のリコーダーは、ほんのりとした苦みと酸味、鼻の奥をまさぐられるようなツンと刺す臭いだった。 僕はこの臭いと味を知っていた。
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