0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
その臭いは古い記憶を呼び起こす
放課後の校舎。カーテンの隙間を縫うオレンジ色の夕日。部活生徒の喧騒、鳴り響く下校のチャイム。僕一人だけが残った教室のドアの鍵をゆっくり閉めた。
300gほどの重さは僕の心を押しつぶしそうなほどで、過呼吸、冷や汗、体中が全力で僕を止めようとしていたが、震える手でそれをそっと口へ運んだ。
初めて舐めた好きな子のリコーダーは、ほんのりとした苦みと酸味、鼻の奥をまさぐられるようなツンと刺す臭いだった。
僕はこの臭いと味を知っていた。
最初のコメントを投稿しよう!