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今出良悟⑤
俺が、会社の最上階にある専務室に潜入することができたのは、陣野さんに接触してから二週間後のことだった。
陣野さんが教えてくれた、佐竹譲がある程度長くこの部屋を空けるタイミング。
それが、今日この時間だった。
陣野さんは、当然のことだけれど、俺たちの計画に深入りすることを避けたがっていたようだったので、通常の業務を進行してもらっている。
伊藤は、万が一にも佐竹譲が戻ってきてしまった場合に、俺に知らせる役目。
そして俺が、陣野さんから預かった鍵で専務室へ忍び込み、データを入手する、という訳だ。
「ふぅ……」
俺は部屋の内側からそっとドアの鍵を閉め、息を吐いた。
心臓が口から飛び出そうなほどの緊張をするのは、もしかすると生まれて初めてかもしれない。
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