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「ちょ……何だよ⁉︎」
「アオイの目、俺の目と似た色だ」
「やめろ! 顔を掴むな」
「……灰色みたいでちょっと青い」
「お前だって同じだろ!」
「ちょっと違う。俺はちょっと緑っぽいだろ?」
「ん……確かにそうだな」
まじまじスイの瞳を見て納得しているとハッとしてスイを振り払った。
「……そんなのどうでもいいんだよ!」
「俺たちの名前の由来だ。母さんが言ってた。産まれたばかりの時はもっと色がはっきりしてたって」
「……槙さんが言ってたのか?」
「うん。宝石みたいに綺麗な色をしてたって言ってた」
「へぇ……知らなかった」
感心してぽつりと漏らすとスイは俺を見て笑った。
さっきの酷い言葉もスイの目の周りの痣にも胸の奥がチクッと痛んだ。
「……さっきのは訂正してやるよ」
「さっきの?」
「……だから……」
俺が言葉を濁すとスイは首を傾げた。
「アオイ、もうピアノ弾かないのか? もっと弾いてるところを見たい」
「……弾くよ。弾くから黙って見てろよ」
再びピアノを弾き始めるとスイは黙った。
酷いことを口にした俺が気にしているのに言われたスイは目をキラキラさせてピアノに夢中で全く気にしていなかった。
繊細な見た目と違い、スイは鈍感で真っ直ぐとして揺るがない図太い神経をしていた。
俺はそんなスイに勝てない気がした。
俺たちは兄弟で母親が違う。双子みたいで双子じゃない。
レッスン室でスイと椅子を並べてこうしてピアノを弾いている状況に俺は不思議な気持ちがした。
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