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「……当たり前だろ。お前は父さんの浮気相手の子どもだ」
口にして、直ぐにしまったと思った。
そんなことを言ったらスイを傷付けてしまうことは容易に想像できた。
俺はスイの顔を見れなくて顔を逸らした。
仲良くなれたかも知れない。仲良くなんて出来ない。
矛盾した気持ちに黙って俯いているとスイは椅子から立ち上がった。
立ち去るのだろうと思った。
スイに酷い言葉を吐いてしまったことに胸が痛んだ。
しかしスイは立ち去ることなく、椅子を再びくっ付けると涼しい顔をして座った。
俺が唖然としているとスイは真顔で答えた。
「浮気かどうかアオイは知らないだろ。母さんはまだ屋敷の中にいる。本気かも知れない」
「……はぁ?」
「それに奥様は俺に言ってくれた。俺は愛されて産まれて来たから何も恥じることはないって」
俺は言葉を失ってスイを見た。
母の掛けた言葉にも、それを真っ直ぐに受け取っているスイにも言葉が出て来なかった。
スイもじっと俺を見る。
スイの瞳は俺と同じで黒でも茶色でもない少し変わった色をしていた。
父がフランスのハーフで兄弟の血の繋がりのようなものを感じて不思議な気持ちになると、スイも同じことを思ったのか俺の顔を掴んで目を逸らせないようにした。
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