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その日の夕食は母がニコニコしながら俺を質問攻めした。
母は俺とスイがレッスン室に入る姿を見ていたらしく俺たちが仲良くすることに賛成のようだった。
「それでスイちゃんにピアノを弾いてあげたのね? あの子、喜んだでしょ?」
「凄く。あいつピアノ好きみたい」
「スイちゃんね、小さい時からアオイのピアノを庭でずっと聴いてたのよ。母さん嬉しいわ。二人は兄弟だもの。碧生とスイちゃんが仲直りしてホッとした」
俺はやはり母の態度が腑に落ちないまま食事を口に運ぶ。
「……普通は仲良くしない方がいいんじゃないの?」
「あら? どうして?」
「母さんは嫌じゃないの? 槙さんのこともスイのことも……父さんのことも」
とぼけたように振る舞う母に真面目に尋ねると母は少し考えて口元だけで笑った。
「碧生、スイちゃんは碧生に意地悪なことする? 嫌な子?」
「……しないし違う」
「そうね。とても素直。真っ直ぐ、可愛い子でしょ。槙さんだってそう。真面目で控えめでよく気がつくしっかりした女性よ」
「だから?」
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