人々を愛した代償

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神々の住むオリンポス山は、頂上が雲と同じ位の高さとなる、美しい山である。 ある日最高神ゼウスは、参謀役のプロメテウスに言った。 「人を作って地上に住まわせたい。器用なお前に頼もうと思っている」 「人とはどのような生き物にしますか?」 「姿形は我々に似せて、ほどほどの知性があり、衣食住をし、複数で協力させて生きさせよう」 「成る程、分かりました。造ってみます」 ゼウスの気紛れな発言であったが、プロメテウスは命を受けて地上に降り、土をこねて人造りを始めた。 想像力にも長けているプロメテウスは 「痩せた人を造ってみよう。鼻を低くして目を丸くしてみるか」 と楽しげに造り上げ、最後に命を吹き込んだ。 すると初めての人類は目覚めて言った。 「お父上、はじめまして」 「うむ。座って待っていよ」 プロメテウスは再び土をこねた。 「次は背を高くして、目のつり上がった人を造ろう」 プロメテウスは造るのが楽しく、1人、また1人と造っていった。 7体目を造っていると、後ろに座っている人々が訴え始めた。 「お父上、喉が乾きました」 「お父上、腹が減りました」 プロメテウスは振り向き 「ではお前たちは皆で協力して、水や食べ物を探してきなさい」 と言い、人々は返事をして、皆で話しながら水や食糧を探しに行った。 土をこねていたプロメテウスは、大丈夫だろうか?と心配になり、中断して人々の様子を千里眼で見ていると、人々は会話をしながらふたてに分かれ、1組は川から水を得て、もう1組は果物を取って、皆で分けあっていた。 プロメテウスは見届けてから、人造りを続けた。 ゼウスは数を言わなかったので、プロメテウスは沢山の人を造った。 人類の始まりであった。 しかし造ったのは全て男である。
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