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夜半、プロメテウスはオリンポスの火を枝につけて持ち出した。
ゼウスの怒りを承知の上で、プロメテウスが決断した事である。
前回の捧げ物の件で、ゼウスはプロメテウスを責めず、人々にだけ罰を与えたのは、これまでの貢献があったればこそだったが、この行いがゼウスに対する裏切りである事は明らかであり、最高神ゼウスの力の偉大さを最も理解しているのは、プロメテウス自身であった。
プロメテウスはそんな思いを払拭するかのように駆け、人々の元に火を届けた。
人々は歓喜したが、このままで済むはずがない事を知っている、プロメテウスの表情は固かった。
同時に、ゼウスに人々の内情の理解も欲しかったし、自らの愛の注ぎ場所であるという、プロメテウス自身への理解も欲していた。
望みや希望のような、切なる気持ちだった。
「どうぞあの方に、生きる命の想いが伝わるように」
そう呟く中、人々は火を増やして賑やかに喜びを分かち合っていた。
が、プロメテウスの願いは儚く、ゼウスは激怒した。
賢いプロメテウスの事だから、余程考え抜いての行いなのは理解していたが、愚弄したかのような行いを、1度ならず2度までもしてしまい、その忠誠心の無さがどうしても許せなかった。
「どんな想いがあろうと、私に背くとどうなるか、よくよく知るがいい」
ゼウスは自らに背いた代償を与えるべく、配下の神々に指示を出した。
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