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「あれっ?雲流、学校が空っぽだよ?」
「はい、何だか感染予防で閉鎖されてるみたいです。そのうちに他も閉鎖になるとか…」
「雲流、よく知ってるじゃん!」
「はい、放ったらかしにされてたんで彼女とニュースを見たり、なんちゃらしてたりましたから」
「なんちゃらって何だい! あれっ?雲流、あの行列は何?」
「あれは、マスクとかトイレットペーパーを買うのに並んでるんですよ」
凄い光景だった。
「雲流、ちょっとどっかの病院に向かって」
「はいさっ!」
ここは日本有数の港町、そこに大きな客船が停まっている。それを囲う様に沢山の人がいる。病院に行くと医師や看護師が寝る間もなく動き回っている。
「何だか大変な事になってるね」
静かに雲流に話しかけた。
「紗耶香様、お隣の国に行って見ますか?もっと凄い光景がご覧になれます」
「お願い…」
そこは昼間だと言うのに誰もいない。たまに警官らしき人が回っていた。
「雲流、何これ?」
「ロックダウンと言うらしいです。命に関わる事、それ以外は外出してはいけないんです」
「えっ?日本もいずれこうなるって事?」
「さあ、どうでしょう…だから天女様に言われたじゃないですか、様々なストレスを回避させる勉強をしろと」
「雲流…一旦天の国に戻ろう…」
私はショックを受けた。自分が生まれ育った国が今目の前にある国の様になってしまうのかと思うと恐ろしさと悲しみがいっぺんに押し寄せて、この先冷静に見る事が出来なさそうに思えた。
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