second chapter

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 克実は小児科医として某総合病院に勤務しており外来診察以外に当直の日がある。昨夜は当直で、今日は昼過ぎまで3時間寝て出て来てくれた。 「メッセージには明日でもいいって書いたけど…今日克実と会えて良かったよ。ありがとう」 「問題ないよ。それにもう連絡しようと思っていたところ、今日から10月だ…母さんに誕生日プレゼント買いに行こうか?」 「そうだね…今回は持って行く?配送にする?」 「悩むところだな…愛実が行ったら一華ちゃんの結婚式のことで一言二言余計なことを言われるのが目に見えてる」 「…克実は行きたくないでしょ?」  克実は少々厄介な性格を抱えている‘潔癖症’不潔恐怖症と呼ばれる潔癖症は現代病の中でも強迫神経症と言われ直すのが難しいものだ。彼のそれは病名が付くほどではないので几帳面過ぎる難しい性格と言えるのかもしれない。その彼にとって、トイレの蓋が閉まっている時と開いている時のある実家は居心地が悪いのだ。  精神的な偏りがあるのだと本人も自覚しているが、いざ開いた蓋を目にする不快感や嫌悪感は私には想像の出来ないもののようだ。そして彼は自分から患者に触れられるし、患者の子どもが‘先生~’と手を伸ばせば抱き上げられるが、他人とのスキンシップは耐えられないという。彼に言わせるとキス、とりわけ寝起きのキスや唾液を交換するようなキスは想像だけで‘菌’に負けそうらしい。  私だけが例外で、克実は今も私のフォークから一口タルトを食べたし、普通に互いの家を行き来も出来る。それは、愛実は小さな時からヨダレを垂れ、ご飯を食べ溢す存在、出来なくて当たり前の存在だったから、というのが彼の見解だ。両親も私たちが生まれた時からあんな感じだったが…そこが彼の‘癖’や‘拘り’になってしまったのだから仕方がない。
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