second chapter

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 会ったというほどでもないけど…会ったには違いないか。一拍遅れて 「…こんにちは」  と返すと、その‘間’に何か感じた克実が私の背中にそっと手を添えた。兄としてか彼氏としてか…どちらでも対応可能ということだろう。 「買い物ですか?」 「…はい」  話したことのない相手からの余りにも真っ直ぐな視線に戸惑いながら短く返すと、唐突に彼が言った。 「パールがとても良くお似合いです」 「えっ…」    さらに戸惑った私に 「ごめん、僕じゅえ…」 「知り合い?」    男性を遮り克実が私を見下ろす。 「知り合いというか…昨日一杯だけバーで飲んだ時に近くに座っておられた方」 「そう…行こうか?」  克実が私の背中をそっと押しながら男性に会釈するので私も同じように軽く頭を下げて通り過ぎる。私たち兄妹は自意識過剰と言われるだろうがこれまでの経験上こういう場合絶対に互いの名前を口にしない。兄妹ともにストーカー被害にあったこともあるからね。二人の距離はそのままに婦人服売り場の階までエスカレーターで上がった。 「あのバー?」  克実に聞かれて頷く。あのバーは何年も前に克実が教えてくれて二人で行ったり、ここ2年くらいは一人でも立ち寄る。 「あそこなら心配ないけど…気になるなら一人で行くなよ」
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