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悠衣の気持ちはずいぶん前からきちんと私に伝わっていたんだ。だけど自分が踏み出せなかっただけ…彼に疑われたかなと感じた時も本来なら‘そんなことないよ’とすぐに自分で伝えられたはず。
男は騙すもの、男はコリゴリという固定観念が自分を頑なにしていたのだと思う。その頑なさを悠衣は根気よくほぐしてくれた…まだきっと今この瞬間も、そしてこれからもそうなんじゃないかな。
「私、男はコリゴリなの」
「知ってる」
「…でも…悠衣は悠衣なの…男じゃない…あっ男じゃないことはないんだけど…悠衣は悠衣なのよ…ごめん…ちゃんと伝えようと思ったけど…ぐちゃぐちゃだ…ドキドキしてる」
彼に抱きしめられ、彼の腕の中でドキドキしている。
「大丈夫、伝わってる。愛実の中の男という一括りから俺は抜け出せたんだな」
「それそれ…うん、それです。悠衣の方がうまく私の気持ちを言える…ショックだ」
「ふっ、ショックなのか?」
「そうだね…私ももっとちゃんと伝えたいなって思う」
「慰めようか?落ち込んでるなら…どうして欲しい?」
悠衣の声の糖度がアップし耳から脳が溶かされそうになる。
「…その声…やだ…反則です」
冷静さを保ちたくて少し体を離そうとするが彼の膝の上に抱き上げられてしまった。そのまま見つめられ自分で目が泳いだのがわかりカッと頬が熱を帯びた。
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