Dinner with Yui's parents *thanks for 20,000stars*

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 ホテルで美容室に直行すると、悠衣は私をそこへ残し‘Diamante Kai’の店舗へ向かった。ここまで来たから顔出ししてくるらしい。抜き打ちの意味と社長が店舗に来る、数分でも店頭に立つという意味。そしてそれが他の店舗にすぐに伝わる、その効果は大きいとホテルへ来る途中に話してくれた。 「すぐ戻る」  彼は私の下ろしたままの髪をぐしゃぐしゃっと撫でて颯爽と出て行った。すぐ横にあった鏡を覗き手櫛で髪を整えようとすると、鏡の中で微笑む美容員さんと目が合った。彼女は 「そのままでどうぞ、こちらへ」  と案内して下さり、そこからは慌てる様子もないのにとても手早く感心した。悠衣が‘飾りを一切付けずシンプルに仕上げてくれ’とオーダーしていたらしく、美容員さんと相談してオードリーヘップバーン風の夜会巻きにしてもらった。 「皆藤様のオーダーがベストですね。綺麗なお顔立ちに加え、ドレスが総レースでいらっしゃいますし単色でも華やかですから髪にお飾りは要りませんね」  私の肩からケープを取りながらおっしゃった時 「終わったか?」  悠衣が立ち止まることなく私の側まで歩いてくる。 「うん、ちょうど」  そう言う私の手を取り椅子から下ろすと、彼は私の全身を眺めた。そして私の右耳から首筋を撫でるようにしながら 「綺麗だ。パールが映えていい。愛実はパールが似合うからな」  と妖艶に微笑む。それから私の腰に腕を回すと、ここへ入って来た時とは違うゆったりとした歩調で歩き始めた。
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