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予約されていたのはステーキ店だった。私たちが席に案内され腰掛けようとした時、悠衣のご両親も来られたのでまずは立ったまま挨拶をする。お父様が悠治(ゆうじ)さん、お母様が衣月(いづき)さんとおっしゃり二人で
「いま単純な名付けだと思ったでしょ?」
と私に向かって言いながら声を上げて笑っておられる。悠衣が
「名乗った時のテンプレ的なやり取りだ。付き合わなくていいぞ、座れ」
と私の椅子に手を掛ける。ご両親も手で促してくれながら座られるのを見てから座ると二人が順におっしゃる。
「さっ、早速だけどオーダーだけしましょうね。愛実ちゃんはお肉はどこが好き?好きなところを焼いてもらえばいいわ」
「他のものは適当に出してもらうが肉は好みを聞いてからと思ってね」
困った…メニューを見ずに部位でオーダーすると言うのか…店の入り口から最高級ランク肉が見えるように置いてあったがお値段もわからない。
「大丈夫だ」
隣から肩を抱かれて悠衣を見ると
「いろんなところを少しずつ食えばいい。メニューもないのに注文できると思ってる方がおかしいんだ」
まずは私に、それからご両親に言う。
「すみません。こんな高級店初めてで…」
「謝るな、愛実。俺が一口目から腹一杯になるまで全部注文してやる。楽しみにしておけ」
自信満々に言う悠衣を見てご両親がまた笑い出し、おっしゃった。
「全部悠衣に任せるわ」
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