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明け方眠りにつき4時間ほどで目覚めると、ちょうど愛実が腕の中でもぞもぞする。
「ぁ…お泊まり…だった…」
小さな独り言が聞こえ頬が緩む。
「忘れてた?」
「おはよう、悠衣…悠衣にくるまれてるから寝心地は変わらないけど…匂いが違うから思い出した」
「眠れたみたいだな」
「悠衣と一緒ならどこででも眠れる」
「朝から誘ってる?」
「ううん、誘ってない」
「即答…ひでぇ」
「このお部屋を少し楽しむ時間が欲しいな…せっかく来たんだもの」
「ん、朝ルームサービスにすればいい」
庭園が見える部屋ではなかったが、都内が見渡せる窓辺で朝食をとる。
「いいお天気で良かった。ここからの今日のこの景色は100点満点でしょ?気持ちいい」
「そうだな。普段窓の外をゆっくり眺めて飯食うこともないから休日という感じもいい」
「チェックアウトしてからお庭1周しようね」
愛実はチェックアウトのためフロントに行く途中、花屋に行きたいと言う。着いて行くと花瓶のいらないアレンジメントを注文し親父たちの部屋に届けるように頼んでいた。俺がチェックアウト時に一緒に支払うと言っても聞かず、それは愛実が精算してしまった。
「お待たせ、悠衣」
「ん、親父たち喜ぶぞ。ありがとな」
「ほんのお礼です、ふふっ」
この休日から俺の親が何かと愛実、愛実と言うようになったのは自然なことだろう。俺も一度愛実の両親に会わないとな。そう思いながら愛実の手をきゅっと握り秋の庭園を歩いた。
[完]
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