Dinner with Ken and Lisa *thanks for 30,000stars*

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「その日はイタリアに到着した日で…私は幼い時に亡くなった母の思い出がそこにないことを感じていたんです。そしたら彼が…イタリアの家にケンの思い出を増やしてって言ってくれたんです。何度も来るよって…その時に心が震えました…それまで結婚の必要性は感じていなかったけど、必要か不必要ではなく必然だと思いました」  リサさんの言葉に愛実がポツリと呟いた。 「悠衣の言っていたことと似てるね」 「ん?俺、何言ってた?」 「私も聞きたい。愛実さん、教えて」  リサさんは興味津々といった風に愛実を見つめる。愛実は困ったように笑ってから思い出すように話を始めた。 「私は結婚に消極的です…悠衣にははじめからずっとそう伝えていました。そしたら、結婚するしないと言うのではなく…付き合った先の当人同士の幸せが結婚なら結婚するだろう…それが50歳でも70歳でも…悠衣は私にそう言ったんです。それってリサさんが言う‘必然’と似てるかなって」 「似てるじゃなくてそういうことよね、ケン?」 「そうだな…必然なら遅かれ早かれそうなるってことだ」  リサさんに答えた滝沢さんが俺に聞く。 「こういうことを私達に聞くということは…皆藤さんにも何か思うところが?」  滝沢さん夫妻の視線が好奇とともに俺に向けられ、愛実は不安そうに俺を見た。
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