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「愛実が不安になるようなことはひとつもない。俺がどれだけお前を追いかけたか知ってるだろ?離れるわけないんだから、そんな顔するな」
愛実の頭を引き寄せこめかみにキスをすると
「私の聞き方が良くなかったかもしれません…申し訳ない」
滝沢さんが言う。
「いえ…どんな時も愛実がこんなに不安な気持ちにならないほど私の気持ちが伝えられていないのが問題なだけです。もっと伝えないといけないようだ」
愛実の頭を一撫でしてから滝沢さん夫妻に答える。
「思うところはいろいろありますよ。毎日いろいろな場面で幸せだと感じてこのまま一緒にいられればいいと思うこともあれば、結婚したらもっと幸せに出来るのか?なれるのか?と考えることもある。先日、車で事故を目撃した時には…遺言書を用意しておかないと、今のままでは愛実に何ひとつ残せないとも思いました。滝沢さんもご存知のように彼女は自分のマンションを売って私と暮らしていますから…万が一の時に彼女を守れる方法は?と自問しましたよ」
滝沢さんは大きく頷き、リサさんは
「そういう考えもあるわね」
と小さく呟く。愛実は俺だけに聞こえるような声で
「やめてよ…」
と漏らした。そして俺は出来るだけ明るく皆に伝えた。
「まだ決定的なものには行き着いてなくて…だから滝沢さんにお聞きしたんですよ。愛実と共に生きることは決定していますが」
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