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「愛実、結婚するか?結婚しよう…俺たち」
愛実が十分俺の考えを理解してくれている。出会った頃から何度も伝えてきたそれぞれの付き合いや愛情。頑なだった愛実が頭で否定していても受け入れられていなくても、俺が言葉で全身で伝えてきたことを全て受け止めてくれた。そう思った瞬間、心臓が熱く音をたて自然に言葉が出てきた。
「ふふっ…悠衣、私たちのタイミングはここだったのかな?」
「愛実が男にあんなに否定的だったところから、俺の伝えたいこと全てを理解し受け止められたと感じた瞬間…そう思った」
「ちょっと…岳人…どうする?私たち歴史的瞬間に立ち会ったの?」
「そうみたいだが、ちょっと声抑えろ紗綾。まだ返事…まだだから」
岳人さんのヒソヒソ声に促されるように愛実は俺に向き合った。
「悠衣、ありがとう。結婚しよう」
「愛実」
俺が愛実を抱きしめた瞬間
「「おめでとうっ」」
と二人の声がし、彼女の頬を手のひらで包むと
「悠衣、ストップ。胎児に影響があるのでそれ以上は今日はダメでーす」
紗綾が大袈裟に腕でバツを作ったので皆で声をあげて笑った。
食事のあと俺たちの部屋でもう一度愛実に伝える。
「勢いで言ったのでも何でもないからな」
「わかってるよ。悠衣は結婚にこだわってなかったから勢いは必要ない。ただこう…あの時きっと沸き上がってきたんだよね、自然に結婚という気持ちが」
「その通りだ、愛実。そこまで理解してくれているんだな…嬉しいを通り越して…すげぇ幸せ」
「私はもっと幸せ」
どちらからともなく抱きしめ合い、言葉もなくただ静かに互いの体温と呼吸を感じていた。
[完]
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