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悠衣は
「想定内の言葉だな。直接聞けば愛実の気分は良くないだろうが…大切な娘の心配をしていたらそれぐらいは言われるだろう。大丈夫だ」
と私の肩を抱きポンッとひとつ叩く。
「悠衣の言う通りだな。回数に関係なく、それぐらいは言われることもあるだろうし。愛実、俺が二人揃ってちゃんと連れて行くから…落ち込むとしたらその後だ。今はまだ早い」
「おい、克実。落ち込む必要はないだろ?俺と愛実が結婚すること、愛実が幸せになることは決定的なんだ。俺がいる限り愛実が落ち込むようなことはない」
自信たっぷりの悠衣の言葉と、肩に感じる力強い彼の手に励まされるのは間違いない。
「そうだね。悠衣に任せちゃお。克実もいるしね。お願いします」
二人に頭を下げると悠衣は
「それでいい」
と言い、克実は
「俺たちに丸投げか?」
と苦笑した。
そして土曜日の夕方、先日紗綾と岳人さんと食事をした同じ部屋で克実と両親を待つ。
「こんなに短期間のうちに、またここの豪華な会席をいただくことになるとは思ってなかったな」
「おっ…愛実、ちゃんと食う気満々で余裕だな。料理、楽しめよ」
その時
「お連れ様、ご到着されました」
と声がかかった。悠衣は一度私の手をぎゅっと強く握り、大丈夫だと小さく言ったあと
「どうぞ、お願いします」
そう言い立ち上がった。
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