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型通りの挨拶をする間も、ご両親は俺よりも愛実のことを視線を揺らしながら見ているようだった。
「食事を運んでもらう前にお話を聞いて頂きたいのですがよろしいですか?」
「「はい」」
お二人ともの小さな声には申し訳ない気持ちになりそうだが、ここは自信を持って愛実を任せて欲しいと伝えるべきところだ。
「私と愛実さんは結婚します。愛実さんをください、という申し出でなくてすみません。私は愛実さんを今以上に幸せにします。それをお伝えしたく、この場を設けました。今後どうぞよろしくお願いいたします」
俺が頭を下げると一瞬の静寂のあと
「ぷっ…悠衣…お願いするところ…そこ?愛実との結婚じゃなく?…悪い…俺が口を挟む場面でなかった」
克実が珍しく声を上げて笑いながら言う。
「いや、克実も家族だ。改めてよろしくお願いする」
「そうだな。年上の弟だな…こちらこそこれからも頼む」
まだ何も言わずに俺たちのやり取りを聞いているご両親に愛実が言葉を掛ける。
「お父さん、お母さん…二人の言いたいことも心配もわかるけど…悠衣は絶対に大丈夫だから。初めは私も結婚するつもりはなかったし、悠衣も同じようにパートナーでいいという考えだったけど…」
「そしたら、そのままでいいでしょ?」
お母さんの言葉が愛実を遮った。
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